世の中と同じさ。
フィギュアスケートにも
守られる選手と守られない選手がいる。
許してもらえる選手と許してもらえない選手がいる。
上げられる選手と上げられない選手がいる。
甘やかされる選手と甘やかされない選手がいる。
その差は何なのか?
問えば、その時その時の辻褄合わせのような、不確かな答えしか返ってこない。
「理不尽」な競技。
切なく、悲しく、もどかしい。
真央は甘やかされてない選手だから、
(Jr.の頃ならともかく)
理不尽に真っ向から戦っていく選手だから、
彼女を応援することこそが正義だった。
負けたら、泣き、
悔しくて地団駄踏んで、怒って荒んだ。
戦士の傷は痛々しくも、甘美で美しかった。
彼女の戦いこそが、フィギュアスケートを
好きでいる根拠だった。
彼女の戦いの背景に、国際情勢を見てとり、
彼女を傷めつけたものの正体を知り、
世の常の理を知った。
知ってしまった以上、後戻りする道はなく、
知りたい欲望を止めることなど出来ようもなく、
知れば知るほど息苦しくなり、
生きていくことさえ辛いと思ったさ。
それでも戦っていく中で、仲間を見つけ、
励ましあい、時には叱咤され、ダメ出しもされたけど、
共に戦った思い出は永遠に輝く宝物だ。
僕らは果たして勝てたのだろうか?
フィギュアスケートの闇を振り払えただろうか?
世の中の闇を振り払えただろうか?
きっと何も結果を残すことはできなかったのだろう。
そして時は流れ、時代が変わる鐘が鳴り響く。
彼女がフィギュア界を去る時がきた。
その最後の時でさえ、彼女は自らの意志で凛と背筋を伸ばし、
頭から爪先まで正しく、途轍もなく美しかった。
最後まで正義だった。
何故と問う度、悔しくて悲しいルール。
裏で糸を引く、闇取引がまかり通る、
スポーツとは思えない凶々しさ。
フィギュアの彼方面は汚れきっているというのに、
浅田真央は此方面で生きて、此方面で終えようと言うのだ。
悔しい悲しいどうしようもない想いを
そっと隠して。
真央が最後まで口にせず、隠し通した想いならば、外野は、もう追求してはいけないのだろう。
だけど、理不尽と戦った日々は、
これからの人生に花を咲かせる肥料となるだろう。
今でも悔しいーちくしょーって叫びたいし、あばれたいし、泣きじゃくりたい。
真央の本当の笑顔を永遠に見ていたいのに、
美しいけど泣きそうな笑顔を残して行かれたら、この想いをどうしたら良いのか、全くわからない。
甘やかされ、上げられ、調子こいた選手たちは、こんなに愛されはしない。
正義をよく見よ。
光の目指す果てをよく見よ。
まぶしくて見えやしないだろうが。
浅田真央は暴走するフィギュアスケート列車から、奇跡の生還を果たした、
たった一人の人です。
彼女の数々の奇跡を体現できた、
同じ時代を生きて来れた、
それだけが、
それだけが、僕の幸いです。
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