今 万感の思いを込めて 汽笛が鳴る
今 万感の思いを込めて 汽車が行く
ひとつの旅は終わり また新しい旅立ちがはじまる
銀河鉄道999(スリーナイン)というアニメの名言を思い出していた。
・・・ひとつの旅は終わり また新しい旅立ちがはじまる・・・
MOIのリンクは、
町田樹くんにとっての、別れと出会いが交差するプラットホームとなった。
過ぎゆく日々を、万感の思いを込めて見送り、
新しい旅立ちへ、乗り換えてゆく。
[300回]
「エデンの東」は、町田樹によって、
フィギュアスケートの一つの「プログラム」から
一つの「作品」となり
そして、今、一つの「伝説」となった。
町田樹くんの意思を込めたスケートを
きっと、忘れることは無いだろう。
永遠に記憶の中で輝き続ける。
最後に、短い詩を綴った、サティ「ジュ・トゥ・ヴ」を置いて
静かにリンクを去って行った。
「あなたが欲しい」「あなたが大好き」と訳されるこの曲を演じ、
「ファンの皆さん」への、
また、「競技としてのフィギュアスケート」への
「愛」と「感謝」を示したのだろう。
氷上の哲学者、あるいは詩人とも呼ばれた
町田樹くんらしい「別れの言葉」だった。
静かな余韻が会場を満たし、幕は引かれた。
思えば数奇な存在だった。
ソチ五輪の男子代表は、高橋くん、羽生くん、小塚くんで
世間の予想が固まり始めたころ、
風のように現れ、第三の男の立ち位置を欲しいままに手にし、
また、風のように去っていったのだ。
もちろん、それは観客としての側の感想であって、
彼は、ずっと前から、すぐ近くに居た。
我々の目は、きっと、節穴だったのだろう。
大事なものは、いつも、きっとそばにあって、
存在に気付いた頃には、時はすでに熟し、
あっという間に、遠い存在になっていくものである。
そんなことは、誰だって、
自らの人生で何度でも経験し、
知り尽くしていたのに、
何度も涙を流して、
何度も見送ってきたのに。
それでも、やっぱり、寂いしいんだな。
切ない思いがこみ上げてくるのを
止めることが出来ない。
大人たちはさ。
若人の新しい旅立ちに、涙を流さずにはいられないみたいだ。
ところで、
町田くんが、
自らの「セカンドライフ」の「コーディネイト」を自ら行い、
スケート界を去って行ったことで
スケート連盟が、選手たちの将来について、
いかに無責任であるかが、また、露見した。
コーチ、振付師などでフィギュアスケート界に身を残すことなく、
また、メディアに露出して生きていくのではなく、
新たな、全く別の道を進むことを決断した町田くんの姿に、
連盟も、メディアも、危機感を感じて欲しいものだ。
スケートでは食べていけない。
スケート関連の職に就ける元選手は
ほんの一握りだろう。
町田くんの選手生活への終止符は、
連盟に対する「強いメッセージ(警告)」とも言える。
しかし、
それでも、町田くんは、
連盟の顔を傷つけることなく、
哲学者、あるいは詩人らしく、
美しく、劇的に、
フィギュアスケート界から去って行ったのだ。
まるで、それが彼の連盟に対する
「最後の思いやり」であるかのように。
さあ、すでに汽笛は鳴り響いた。
今こそ、お別れの時が来た。
さようなら、町田樹くん。
新たな旅立ちを祝福しよう。
町田樹 Je te veux PIW横浜 2014
銀河鉄道999 エンディング 劇場版オリジナルED
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