どんなに高い技術を持っていても、
仕上げが粗雑であれば、
その価値は半減する。
また、人柄というものは、
所作、一つ一つに現れるものだ。
宮原知子にぴったりの言葉があるとするなら、
それは「丁寧」ではないだろうか。
今日の演技には、技術や表現力の向こう側に
知子のひたむきで、丁寧な生き方を垣間見たように思う。
[131回]
感情を現すのが苦手そうな内気な知子は
優勝が決まった時でさえ、
歓びを炸裂させたり、涙を流したりせず、
冷静に次の段階を見据えていた。
表現力が必要なフィギュアスケートにおいては、
冷静さが、演技への感情移入を妨げ、
観客に想いが届くこが困難になる側面もある。
だけど、今日のFSでは、
知子の勝利を揶揄する輩は、影をひそめるだろう。
彼女は、やるべきことを実行したし、
指先の所作までが丁寧で、好感が持てた。
確実に一つずつ階段を上がっていく姿が見える。
目的地を見据えながら、
時には、出会う人に道を譲りながらも、
自分のペースで進んでいくことだろう。
観ている側も、
涙があふれて止まらない大きな感動よりも、
穏やかで、安定した気持ちにさせてくれる勝利だったと思う。
どこまで登っていくのか、解らない。
世界の壁は厚く、そして、歪んでいるので、
行く道の途上で、傷つくこともあるだろう。
それでも、彼女が彼女なりに思いの丈を貫いた時、
きっと、結果は付いてくるはずだ。
ジュニアたちもライバル選手たちも、
知子の演技を観て、得るところがたくさんあったはずだ。
ともあれ、知子。優勝おめでとう。
君の物語は、これからが本編だ。
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