今季の男子のショートプログラムでは
羽生結弦選手は、ショパンのバラード1番
町田樹選手は、ヘスのヴァイオリンと管弦楽のためのファンタジア
を使用している。
いずれも、浅田真央ファンにとっては、「胸熱」な曲だ。
[273回]
EXのルールの縛りのない中で演じられた「バラード一番」だったが、
ピアノの細やかな旋律の一つ一つに、見事にステップが散りばめられている。
タチアナ・タラソワ氏と浅田真央との深い絆が感じられた秀作である。
「ショパン バラード一番 と短調 Op.23」
全音楽譜出版社「ショパン バラードとアンプロンプチュ」より
上代万里江氏 解説より、引用。
曲は、上行していくRecitativo(レチタティーヴォ)風の「おだやか」な序奏で始まる。
8小節めから、第1主題があらわれる。
第1主題の動機に基づくリズミックな移行部が続き、
右手のアルペジオの華やかな動きがおさまって
第2主題が抒情的に、そしてのどかに歌われる。
第1主題と対照的である。
その後、第2主題が音型的にも色彩的にも変化を見せて現れている。
下行音階を経て、
左手のアルペジオの伴奏の上に、
第2主題が雄大にひびき、
そのあと、第1主題が短縮して現れる。
これによってソナタ形式における提示部の再現を意味している。
最後は約50小節にわたる「Presto con fuoco (プレスト コン フォーコ)」の
コーダが繰り広げられる。
※Recitativo(レチタティーヴォ) = オペラ、カンタータなどの中の、独唱(叙唱、朗唱)
※presto (プレスト) = きわめて速く(アレグロよりも速く)
※con fuoco (コン フォーコ) = 熱烈に 火のように
説明を書いているだけで、泣けそう。
浅田選手の演技は、この曲を余すことなく表現していた。
全貌は8分ほどになる大作で、
フィギュアスケートの曲にアレンジされているが、
元曲の繋がりを大事に、丁寧に編曲されている。
さすが、クラシック音楽の本元、ヨーロッパの振付師の仕事だ。
何よりも印象深いのは、序奏(レチタティーヴォ)が、ちゃんと活かされていること。
歌の前奏と、このバラードの序奏は意味が違う。
前奏はゆっくり聴いてから、歌いだせばいいのだけど、
序奏は、序奏からが音楽だ。
羽生くんのプログラムにおいて、
ひとつだけ言いたいのは
曲の大事な序奏部分で
「じっと待って、首を一回、回すのみ」は無い。
曲がかわいそうだった。
あり得ないところでの曲のブチ切りなどは、
限られたプログラムの長さに収めるのには
仕方がないことだ。
それでも、丁寧な扱いとは思えないことが多くて
がっかりすることが多々あるものだが。
やっぱり2分50秒では、すべてを表現するには、短かすぎたのか。
曲がかわいそうだった。
羽生結弦 Yuzuru Hanyu - 2014 Japanese Nationals SP 投稿者 japanskate
町田くんは、
序奏からして、表現の嵐。
曲を一音も逃さず、大事にしているのが覗える。
曲が活かされていた。
町田樹にとって、プログラムとは
点数じゃ計れない「自分を表現する翼」のようなもの。
町田樹の演技に浅田真央の珠玉のプログラムを投影させたら、
涙が止まらなくなる。
点数は順位じゃないんだな。
曲が活かされていた。
それがすべての救いのように思えた。
町田樹 Tatsuki Machida - 2014 Japanese Nationals... 投稿者 japanskatePR