僕らは、悪巧みをする時だけは、気が合う。
僕はゆず茶が好きなので、夜寝る前に、ゆず茶タイムを楽しんでいる。
そんなある夜、僕のゆず茶タイムに妹が突入してきた。
キッチンボードから、何やら、缶入りの食材?を取り出し、ゆず茶をつくり、その中に缶からスプーン一杯の白い粉を入れて掻き混ぜている。
「それ、なに?」
僕が尋ねると、妹は、初めて僕の存在に気付いたように、ギクッと体を強張らせて、こちらを見た。
「コラーゲン。見たらわかるでしょ?」
わからないから尋ねたのだが。
「入れたら、おいしいん?」
「まずい。魚臭い。」
「はあ?何でまずいのにコラーゲン?」
「ちょ、ちょっと、声でかい。お母さんに見つかったら怒られる。」
「ええ?それ、もしかしてお母さんの美容の?高かったって言うてたやつ?」
「そそ、いいやつ。一万円くらいって言うてた。」
「えええ?一万円?そんだけで?」およそ500gといったところか。
「おまえ、見つかったら、殺されるで!」
「うるさいな~ほれっ」
そう言って、僕のゆず茶に、スプーン一杯の白い粉を投入した。
「うわーなにするんや?」
「これで、共犯やからね。」
「せ、せっかくのゆず茶が……魚くさっ」
「いいから、混ぜて飲み!」
グリグリグリ~ン
「うわっまぜよった、うわ匂いが変になったあ」
「もう、うっさいな~飲みったら、飲み!」
くそーやられた。
ゴクゴクゴクッと。
うーん、微妙な味になっつまった。
「これで、あにきも、明日、お肌ツヤツヤやで。」
そんなもんなんか?
だいたい男に美容なんて、
つか、妹にもまだ必要だとも思えない。
「お母さんが大事に飲んでるんやから、ぬすんだら、ダメやん」
「共犯者!」
妹が人差し指を僕に向けた。
「や、やめ、指さすな」
僕は尖端恐怖症。
「ごちそうさま。お先に」
僕は猫舌。
くそー。なぜに妹にしてやられてばかりなのだ。妹ペースに乗せられっぱなしだ。
甘やかしすぎたのか、僕に威厳がなさすぎなのか。おそらく後者が正解なのだろうな。
……………………………………
「うぎゃあ~~~~」
次の日の朝、鏡を見たぼくは絶叫した。
なんと、お肌がツルツルなのだ。僕は、かつて体験したことのない、自分の美肌に驚愕した。
美し過ぎる。
この時を人生の分岐点とするならば、僕があちらの世界に向かってしまったとしても不思議ない。
しかし、口元と顎に青っぽく姿を見せてる髭のお陰で、なんとか真っ直ぐな道に踏み止まることができた。
「危なかった」
こんなに効果があるものなんだ。低分子ヒアルロン酸&コラーゲン、恐るべき。
それからというもの、妹と僕は時々、盗っ人と化し、母のコラーゲンをこっそり頂戴している。
僕はその効果に驚愕したが、
妹は「たいして効果なし」などとほざいている。
[6回]
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