五輪シーズンに輝かしい栄光を手にしてしまったら
誰もが少しの休息を必要とし、新たな目標へ気持ちを切り替えるのに時間が掛かるものだ。
だけど、浅田選手が真っ先に選んだのは、あろうことか、自らが組み立ててきた「レゴ」を崩すことだった。
「レゴ」は、完成したものを見て楽しむこともできるが、
一番の醍醐味は、組み立てていくこと自体にあり、結果はおまけのようなものだ。
レゴ好きの浅田選手は、レゴの本当の楽しみ方をよく知っている。
もう一度、組み立てるために「崩す」ことは、新しい楽しみの始まりなのだ。
新しいシーズンには、新しい風が吹く。
「ホスト真央」「真央に追い付け、追い越せ」と新星村上選手を持ち上げる報道が飛び交う。
現に鮮烈なデビューをGPシリーズで世界に発信した。
かつての浅田選手がそうであったように、新星の勢いはとどまるところを知らない怖さがある。
新星の輝きに勝る光を放つことは、諸先輩たちにとって、非常に困難だ。
「初心に戻って」などと簡単に言うが、そうそう戻れるものではない。
浅田選手だって、いずれは後輩が自分の位置を脅かす存在になることをわかってなかったはずがない。
だから、敢えて完成品を崩すことを選んだのではないだろうか。
自らを崩すことで、真の意味で「初心に戻った」のではないだろうか。
そして、後輩と初めて競うNHK杯で、浅田選手が見せたのは、世界への挑戦状ともいえる最高難度のプログラムと、自己最悪の演技だった。
「いったい浅田選手に何があったんだ」と批判、非難、疑問が飛び交う。
浅田選手の顔にも暗い影が落ちていた。
バラバラに散ったレゴと、世界への挑戦状。それはあまりにもかけ離れていた。
だけど、この二つが繋がった時、世界は驚愕することとなる。
浅田選手は、自分の今の状況を憂いているだろうか?
むしろ、完成に向かうプロセスを楽しんでいるのではないだろうか。
そんな風に思ってみる。
レゴを組み立てている時、浅田選手はすごい集中力だって聞いたことがある。
周りの声が聞こえないほどだと。
今の時期、それが一番だと思う。揶揄する周囲の声など何一つ聞こえないほうがいい。
だから、せめて、僕はエールを送る。
「楽しんでがんばって」「がんばることを楽しんで」と。
浅田選手の超力作の「レゴ」と、心の底から湧いてくる素直な笑顔を
僕はいつまでも待っている。
[2回]
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